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「まあ、やりたい方向性もあるんですけど、流れに身を任せつつ。
なるようになるさ的な」こだわりと柔軟性、独特の世界観を持つカフェ店主

山形県上山市の中心部にあるショッピングセンター カミン。
その2階に2014年7月、一つのお店が誕生しました。
『あべくん焙煎珈琲 豆と麦と』
自家焙煎のコーヒー豆を丁寧なハンドドリップで淹れる本格的なコーヒーが頂けるカフェです。
どんなきっかけで上山にお店を出す事になったのでしょうか?
そしてどんな思いからカフェを経営する事になったのでしょうか?
オーナーの阿部優仁(あべ ゆうと)さんにお話をお聞きしました。ここでは親しみを込めて、店名にもある「あべくん」と呼ばせて頂く事にします。

道すがら – 珈琲始めたきっかけはなんですか?

高校を卒業して、専門学校行ったんですよ。サッカーの。

高校ではサッカーはしてなかったんですが、小学校・中学校としてて、何かサッカーに携わる事をしたいなと思っ
て。トレーナーの学科だったんですが、学校に入学してみて、いろいろ分かって来るとトレーナーになるのはやっぱり狭き門で周りをみてるとちょっと俺は無理だなと(笑)で、卒業して帰って来てフラフラしてて、親からのプレッシャーでなんかしないとと思って、某ドラッグストアで働いていたんです。ちょうどそのタイミングで薬事法が改正されて登録販売者という資格が出来て。ドラックストアとかで薬を販売出来る資格ですね。これはもう乗っかるしか無いみたいな感じで(笑)正社員になるにはこれしかないと取得して働いてたんです。そんな中で知人に蔵王でペンションを営んで、コーヒー豆も焙煎しているところがあって、そこにたまたまコーヒーを飲みに行ったんですけど、その時にコーヒーの幅の広さと言うか、奥の深さに感動して。

もともとコーヒーは好きだったんですけど、まだそんなに詳しくなかったので、そのペンションに遊びに行ったり、コーヒー教室とかする時に手伝いをしたりしながら勉強したらスゴく面白くて、そこからハマっていった感じ
ですね。

その流れで上山でまちCafeというのをやってるから、そこでコーヒーを入れてみないかというお話を頂いて週1回出るようになって、近くの長屋門ギャラリーでもイベントするようになって、いろんな人と知り合い、イベントで1年間コーヒーを淹れる・焙煎した豆の販売をさせてもらえることになって、そこから慣れていったんです。やっぱり自分で淹れている分にはいいんですけど、お客さんに淹れる事で評価してもらうというか、そんな経験を積ませて頂いたと思います。

やっぱりお店を持つ前にそういう経験をさせてもらったのはかなり大きかったですね。
でもその時点ではお店を持てたらいいなとは思っていましたけど、やっぱりそんなに簡単ではないだろうなと。

しかし、人生には奇跡的なタイミングというものがあるもので。

当時あべくんは羊毛作家の嵐田真吾さん、のちにあべくんの奥様になる黒田共さんらとチームラムというアーティスト集団として活動していました。
そのメンバーの嵐田さんがショッピングセンター カミンにて喫茶店を営む方が高齢のため、次の人がいないか探しているという情報を手にする。当初の話では、喫茶店オーナーの跡を継ぐ形で喫茶店をする予定だったが、その喫茶店オーナーが体調を崩してしまい、経営が出来なくなってしまったのです。そのため、あべくんが独立して出店する流れとなり、「あべくん焙煎珈琲 豆と麦と」をオープン。

「みんなあべくん珈琲で覚えてくれてる。」

道すがら – 「豆と麦と」というお店の名前は誰がつけたんですか?

うちの母なんです。店を始める時に名前が全然決まらなくて。自分の名前は「ゆうと」なんですけど、うちの家系の男の子はみんな『○○と』と名前の最後に「と」が付く名前で、そこから思いついたみたいで。某ドラマの影響でひらがなで一番大事なのは「と」だと。だから「豆と麦」で終わらず、「と」で終わる事でこれからいろんな人とつながってくようにということで。

でも全然お客さんから覚えてもらえないんですよね(笑)サブタイトルにあべくん焙煎珈琲を付けたつもりが、豆と麦とがサブタイトルみたいになってる(笑)
みんなあべくん珈琲で覚えてくれてる。でもまあそれでいいかなって。あまり気にしてないんです(笑)

「私の中のランキング1位になった」って言って頂けて。

最近、個人的にスゴくうれしい事があったんです。新庄からいらした奥様2人からうちのブレンドが「私の中のランキング1位になった」って言って頂けて。かなりテンションが上がりました。

道すがら ー そう考えると僕らの親世代から上の方って結構コーヒー飲まれますよね?

そうなんですよ。意外とみなさん。なのでお客さんもご年配の方がかなり多いです。

道すがら ー 最近のコーヒーブームとか関係なく飲まれてるわけですもんね。

やっぱり習慣的な感じになってるんでしょうね。最近だといろんなメディアでコーヒーを取り上げてもらえるのをありがたく思ってるんです。
こちらが説明しなくても作り方を認知して頂けてる。

道すがら – コーヒーの抽出方法は何かこだわりがあるんですか?

自分の場合はペーパーじゃなくて、ステンレスフィルターを使っています。これだと安定した味が出せるというか。ペーパーよりも左右されづらい気がして。

いろいろ試してみたんですけど、サイフォンとかは個人的にあまり好きじゃなくて。でもコーヒーってほんとに答えがないから、誰でも参加出来るし、逆に言えばその分シビアでもある。あと人それぞれ好みがあるから。酸味があるのが好きとか、苦みが強いのが好きとか。だから今コーヒー屋が増えてるんでしょうけどね。
誰でも入りやすい業界。
どこで独自性を出せば良いのか、見えづらいのかなと。コーヒー自体は比べるとかなりいろいろあるんですけど、豆屋さんじゃなくて喫茶店となるとなかなか難しい部分なんでしょうね。

今、コーヒー業界はアメリカ西海岸から来たサードウェーブと呼ばれるコーヒーの第3の波が日本に上陸し、席巻しています。「豆と麦と」では自家焙煎、ハンドドリップという丁寧さは共通していますが、以前から日本にある喫茶店のようなナポリタン・カレー・ハヤシライスなどのフードメニューも充実していて、それもまた絶品。そして仲の良いアーティストや作家さんの作品を展示販売もしています。その中でも特に注目なのがコーヒーを店頭で提供する時にも使用しているカップ。あべくんカプオと名付けられたそのカップは一目であべくんとわかる顔が描かれて
おり、ユニークです。

道すがら -(水だしコーヒーの器具を見て)なんか理科っぽいですね。

工業高校出身で化け学だったんですよ。実験をよくしてて
午後からずっと実験みたいな。だから化学系が好きなんだろうなと。ビーカーとかも使ってますし。

道すがら ー なんか風貌も化学者っぽいですよね?(笑)

前はこんなに髪長くなかったんですよ。
マッシュルームカットが好きで。いつの間にかこんな感じになってますけど。でも都会の方では流行ってる
らしくて。長髪系が。おんなの子にはモテないけどしたい人が多いみたい。だからやりたくなくなって来たんですよ(笑)流行ってるとやりたくなくなる(笑)

道すがら ー これからコーヒー教室とかもして頂きたいですね。

いや、コーヒーを教えるだけのものは自分にはないので、そういうのはちゃんとした方にお願いして(笑)自分がやりたいのは「囲む会」みたいなので、コーヒーを好きな人がただ語る会をしたいんです。例えばあそこの豆ヤバくない?とか。自分が美味しかった豆を持ち寄って、みんなで淹れてみたり。やりたいと思いつつ、なかなか出来てないんですけどね。やっぱりあっという間で。日々お店をしていると。「囲む会」も何回かはやってたんです。最初は石を囲む会とか。その時は司会的なポジションの人がいて、その場を回してくれる感じだったんです。自分たちも参加出来るといいんですけど、店を開けながらとなるとそうもいかず。

現在は先ほども出て来たチームラムのメンバー黒田 共さんとご結婚され、お二人で店頭に立たれている。お二人が醸し出す柔らかな空気感は何とも言えない心地よさがある。

ご飯が食べれて、末永く出来れば良いなと(笑)

道すがら– 今後の展望は?

ご飯が食べれて、末永く出来れば良いなと(笑)うちは地元の方だとお年寄りの方が多いので、結構自分のやりたいようにはやれてないですけどね(笑)
基本的にうちの豆は深入りなんですけど、「うすいの」とオーダーを頂く事があるんですが、うちはそういうのやってないんで……薄めますか?みたいな。(笑)
まあ、やりたい方向性もあるんですけど、流れに身を任せつつ。なるようになるさ的な。あとは面白い事が出来れば良いなと。

さっき話した囲む会とか、今「思ひ出ものもの交換何棚」って棚を作ってまして。物々交換をここで開催中で、なんか持って来て棚のものと交換していく感じ。
最初は予約も出来るようにしようかなと考えたんですけど、でも予約であふれちゃってもやだなと思って。その時のフィーリングというか「これだ!」みたいなのを大切にしたくて。
とりあえず、お金じゃない何かをやっていきたいなって二人で言ってて。だから物々交換と。資本主義もてっぺんまで来てますからね。(笑)

モノとモノの交流の中で、その思い出でコミュニケーションが取れるからいいなと。結構子供もお年寄りも関係なく興味を持ってくれるのがここに置いてて分かったんです。
だからみなさんに集まってもらって物々交換会もやれたら面白いと思って。常連のお客さんでこの春から高校生になった子がいるんですけど、その子に運営メンバーになってもらってやったら面白いかなと。スゴくいい子で、コミュニケーション能力高くて、すぐにお客さんのおばあちゃんとかと仲良くなっちゃう。結構逸材なんです。看板息子って言ってる。
看板娘もいるんですけど、看板娘は80歳くらいで(笑)ほんと毎日のように来てくれて、昨日は誕生日プレゼントまでもらっちゃいました。

だから自分たちだけがここでやってるんじゃなくて、ここに来てくれてる人と一緒にやりたいなってのはあります。そう思って今いろんな人に言ってるんです。

インタビューを通して感じたのは、芯はしっかりありつつも、流れによって変化する事をいとわない柔軟性をお持ちだという事。そしてお客さんとの関わりを本当に大切にしています。

美味しいコーヒーや料理はもちろんのこと、ご夫婦のそんな人柄が魅力になっているのだと思います。是非、その魅力をより多くのみなさまに体験して頂きたいです。

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更新日 : 2015.06.02

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